2022年12月19日
12月7日(水)18:00-19:00、未来型医療創造卓越大学院プログラム(共催:臨床研究推進センターバイオデザイン部門・医工連携イノベーション推進事業)FM DTS 融合セミナー 株式会社キーエンス データアナリティクス事業グループマネージャ 柘植朋紘先生の講演会をオンラインにて開催致しました。
株式会社キーエンス(以下、キーエンス)の社名の由来は、Key of Science(科学の鍵)。営業利益率50%を超える高い生産性の源泉は「データで物事を捉え、データで判断する」というデータ活用へのコダワリにあります。今回の講演では、キーエンスにおけるデータ活用の試行錯誤の歴史、データ人材育成のこだわりについてご講演いただきました。
キーエンスでのデータ活用の歴史は1980〜90年代に始まります。当時の営業部門では、顧客マスタのみを活用し、単純な属性データを集計していました。しかし、2000年代に入り商品の購買プロセスが変化したことをきっかけに、属性データに加えて行動トランザクションデータの活用にチャレンジしていきました。ただ、活用の幅を広げていくにあたり、「外部に頼りすぎる」、「ツールに頼りすぎる」、「高度データ専任人材に頼りすぎる」という3つの壁に直面してしまいます。それらの壁を試行錯誤し乗り越えていく中で、「ビジネス部門自体が高度な分析をおこない、日常的にデータをもとに意思決定できる組織をつくる」という理想形にたどり着き、内製ソフトウェアの開発を進めることになりました。その後、他社においてもデータ活用に価値があることに気づき、現在では新規事業として業界業種を問わず数多くの企業のデータ活用を支援されています。
後半では、データ人材の育成のこだわりを3点ご紹介いただきました。1つ目は「研修のための研修はしないこと」です。研修ではなく、実践でデータと格闘することで「データで人を動かすスキル」を身に着けることができると述べられました。2つ目は「『あたりまえの分析結果』」こそ、日常を変え、組織を変えること」です。「知っている」を「できる」に、「できる」を「(無意識的に)している」にまで変化させ、組織に浸透させる上でデータは強い武器になると話されました。そして3つ目は「ROIを短期で求めすぎないこと」です。人材・風土など、見えない部分の醸成が組織としての大きな成果につながると述べられました。
質疑応答では、学内外から多くの質問が寄せられ、活発な議論となりました。最終的には、データ活用にだけに固執せず、デジタルとアナログ両方の良さを活かすことが重要であると締めくくられました。
本講演会は、卓越大学院プログラムに参加する学生の他、企業の方を含む幅広い領域から学内外421名の方々にご参加いただきました。