未来型医療創造卓越大学院プログラム

2023年05月22日

ニュースレポート成果発表

合同メンタリング/内科医・小説家 南杏子先生(5/15 菊地里美)

未来型医療創造卓越大学院プログラム生
医学系研究科保健学専攻(修士2年)
菊地 里美

開催日程:2023年5月15日(月)16:45~17:45

メンター:南 杏子先生(内科医・小説家)

目的:南先生がご経験された終末期医療と小説についてお話をいただき、今後も続く超高齢化社会における医療のあり方や情報発信の方法に関して検討する。
実施内容:zoomを活用し、前半30分で南先生より終末期医療と小説についてご講演いただき、後半30分で質疑応答を行った。

所感:講演ではまず、終末期医療と高齢者の3つ特徴についてお話いただいた。その後、事例を交えて実際に終末期医療の現場で起こっている課題について医療者目線と患者目線でご説明いただき、高齢者における終末期医療のゴールについて考えることができた。

質疑応答では、大きく2点が大きなテーマとなった。1つ目は、小説などのメディアを通して医療現場の現状を伝えることについてである。南先生のご経歴として、出版社にて取材記者の仕事をされていたことがあるそうである。医師として働き始めてからも、自分の発見をより多くの人に伝えたい、自分のものだけにするのがもったいないという考えから、小説を用いて終末期医療の現状や課題を読者に知ってもらうことで、良い解決策を生むきっかけ作りをしたい、とお話いただいた。

2つ目は、終末期における意思決定についてである。医療現場では、医療者は胃ろうを造設するのか、心肺蘇生の希望はあるのか、といった医療処置に関する判断について知りたいと考えている。しかし、患者や一般市民にとってそのような話題を急に提示されても中々家族などで話し合いにくく、結局患者の希望が分からない、というケースがよく見受けられる。これに対して、医療者がメディアを味方につけて、読者や視聴者に実際の医療現場について知ってもらい、家族などで話し合いをしやすい話題作りをすることも1つの方法であることを学んだ。

質疑応答の最後の場面では南先生から私たちへ、排泄ケア時に患者が感じる羞恥心に対して新しいアプローチが無いかご質問いただいた。短い質疑応答の時間だったため、すぐに解決策は出なかったが、臨床で働いているからこそ得られるインサイトで、現場の声の重要性を再認識した。

私は地方病院で緩和ケア病棟・一般病棟で看護師としての勤務経験があり、緩和ケアが専門分野であるため、今回の南先生にご講演いただいた内容はどれも深く共感した。今回の合同メンタリングを通して、終末期医療や緩和医療の質向上のために、医療者に対して知識を普及するだけでなく、患者または一般市民が終末期医療に関する話し合いをしたり終末期医療について知りたいと思うきっかけを作ったりすることの重要性を理解した。私としても、研究だけでなくその先で自分のやりたいことは何なのか、考えるきっかけをいただいたように感じる。

この度は貴重な機会をいただきました、南杏子先生に心より御礼申し上げます。

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