未来型医療創造卓越大学院プログラム

2023年06月12日

ニュースレポート

合同メンタリング/内科医・小説家 南杏子先生(5/15 辻 一志)

未来型医療創造卓越大学院プログラム生
医工学研究科医工学専攻(修士1年)
辻 一志

名称:未来型医療創造卓越大学院プログラム 合同メンタリング
開催日時:2023年5月15日(月)17:45~18:45
開催方法:Online開催(Zoom)
メンター:南 杏子先生

【実施内容】
前半で終末期医療に関して南先生からご講演いただき、後半では質疑応答形式で南先生と参加者との間で対話を行った。

【所感】
日本における終末期医療では、老衰から「回復」させるために医療現場が努力を注いでいる。しかし、それは患者やその家族にとって真に幸せなのか。老衰は治る病気ではなく、生命活動を終える自然な経過である。それならば、経口摂取をしたりたくさんの薬を飲んだり、あるいは酸素投与でベッド生活をするよりも、食べたいものを食べ、好きな人と好きなことをすることが高齢者にとっての真の健康で幸せではないのか。
このような、標準的な医療とは違う観点、患者が笑顔で過ごせるかどうかということを重視した終末期医療についてご紹介いただいた。

このような終末期医療の考え方は、高齢社会となった現代の日本において画期的で広く浸透するべき考え方であると思った。患者が笑顔で過ごせることを重視するというこの精神は、終末期医療だけではなく障害者医療など他の医療でも活かせるかもしれない。

質疑応答では、南先生が小説家として医療について発信されていることに関連し、医療について世間に伝えること、またその際のメディアとの関連についての質問が多くみられた。
その中で印象的だったのは、医療の現状や問題を広く世間に考えてもらうためにはどうすればよいか、という質問への回答だった。例えば何か講座にくるような人はその講座に来ている時点で大丈夫だが、問題は来ない人にどう訴えるべきか。小説を書くか、ドラマを作るか、そのような芸術の果たせる役割は大きいが、非常に難しいことである、と先生が言葉に詰まりながらも対話されていたのが印象に残った。

小説を書かれている先生だからこそ、世間に訴える方法について明確な答えを持っているかと思っていたが、そのような先生であっても世の中に広く発信することの難しさに悩まれている。ただ、別の質疑での対話で、医療の現場での経験を自分だけのものにするのはもったいないから文章にしたかった、スイスで目の当たりにした安楽死の問題に対し質問の投げかけとして作品を出した、と答えられていたことも印象的だった。
考えるきっかけを与えることの難しさを実感したが、それでも何らかの方法で情報を発信する必要性も改めて認識した。

対話の終わりには、患者にとっておむつ交換は非常に恥ずかしいことだがこの問題を解決する技術はないかと、南先生から受講者へ逆に質問を投げかけていただいた。決して複雑ではないものの解決が困難な課題が医療現場には溢れていることを、この1つの質問を伺っただけでも痛感させられた。
これから行っていくバックキャスト研修では、医療現場の問題についてよりたくさん触れていく。そのような問題を解決できるアイデアを生み出せる力を、これから研修等で経験を重ねながら身につけていきたい。

最後に、この度、南杏子先生から貴重な機会をいただきご講演いただきましたことに深く感謝申し上げます。

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