未来型医療創造卓越大学院プログラム

2023年07月31日

ニュースレポート

【インタビュー動画公開】令和5年度春 紫綬褒章受章 今岡仁先生 NECフェロー/東北大学特任教授(客員) (レポート 平山英幸、久保田雄大)

この度、令和5年度春 紫綬褒章受章、NECフェロー今岡仁先生(東北大学特任教授(客員))にインタビュー形式でお話しを伺う事ができました。
以下のリンク先からインタビュー動画をご視聴いただけます。
※本プログラムHPのトップ画面にあるYouTubeのアイコンまたは、動画ライブラリーからもご視聴いただけます

【未来型医療創造卓越大学院プログラム 公式YouTube】
祝 紫綬褒章受章 今岡仁先生(NECフェロー)インタビュー
https://youtu.be/wnL-zkbOgmc

【東北大学新聞】
https://ton-press.blogspot.com/
https://ton-press.blogspot.com/2023/08/imaoka.html
当日は、学友会報道部 広告担当であり、東北大学新聞 編集長の 鈴木優梨子さん(東北大学文学部3年)が同席し本件について取材いただきました。

また、インタビュアーをつとめた学生2名のレポートを掲載致します。


未来型医療創造卓越大学院プログラム生
医学系研究科 保健学専攻(博士2年)
平山 英幸

この度はNECフェローで本学特任教授(客員)である今岡仁先生が紫綬褒章を受章されたとのことで、学生によるインタビューに応えていただきました。私自身は、今岡先生に卓越大学院プログラムの個人メンタリングでもご指導をいただいていたこともあり、今回またお話できる機会をいただけたことを大変光栄に思います。今回は大きなテーマとして顔認証システムについて、医療分野への応用について、研究者のキャリアや心構えについての3点をお伺いしました。

1.顔認証システムについて
NECの顔認証システムは現在世界45カ国導入され、特にインドでは顔・指紋・虹彩を用いた国家的な生体認証システムに導入されているとのことで、世界的に利用されているものです。このように幅広く活用されているのは国際的なベンチマークテストで優勝する性能を有していることがあります。他社と比較してどのような所で優位性があるのかをお伺いし、認証精度・検索速度が優れているという基本的な性能に加えて、ありとあらゆる所で汎用的に使えるものを開発していることが大きいというお話をいただきました。また、AI開発に重要となる学習データの扱いについても、データの量と質の観点から様々な実験を行うことで最適な学習となるように試行錯誤しているとのことでした。

2.顔認証技術の医療分野への応用について
2つ目のテーマとして顔認証技術を今後どのように医療分野に応用していくのかについても伺いました。今岡先生としては「顔で分かるヘルスケア」をやっていきたいとのことで、疾患の発見や非接触モニタリングに取り組みたいとお話をいただきました。この点に関しては、今岡先生の著書である「顔認証の教科書」(プレジデント社)でも触れられていたことと思います。

顔で分かるヘルスケアを実現していくための現状の課題としては、大規模なデータが無く、データ収集を一からやっていく必要があることが大変な所であるとのことでした。また、非接触モニタリングという観点で精度はどの程度なのかについてお伺いしたところ、脈拍数は取得できるようになってきましたが、血圧など詳細を正確に測定することが難しい指標もあり、まずは医療機器ではなくても診療支援ができるアプリケーションになるようなものを想定しているとお話いただきました。私も、細かい数値が正しいかどうかよりも対処が必要なことが分かるものであれば十分に活用が可能なアプリケーションになると感じました。

3.研究者のキャリアや心構え
最後のテーマとして研究者として大事にしていることなどをお伺いしました。今回のような社会に影響を与えるような成果を出していく研究をしていく上で意識していることについては、その技術が「広く使われるものであるかどうか」を意識されているとのことでした。NECでも顔認証だけでなく、音声認識や自然言語処理など様々な技術開発を進められており、それらを統合することで価値提供につなげていきたいとのことでした。

また、企業で研究されている立場から企業とアカデミアのそれぞれで研究することへのご意見もお伺いしました。アカデミアのメリットは「真実を探求できること」で深い研究ができるが、企業では研究開発が「使えるかどうか」に重点が置かれることが違いであること、しかし近年は双方の良いところを合わせて産学連携の形でより良いものを生み出していく流れができているとのことでした。研究者としてはどのような立場にいたとしても「ずば抜けたことをした方がよい」とお言葉をいただきました。

続けてこれから研究者になる上で学生のうちに身に着けておくべきことについてお伺いしました。この点については、3年間の博士課程で課題や研究方法などについて深掘りして考えることに向き合うことを通して、「深く考える」ことができるようになった経験がとても良かったと学生時代を振り返っていただきました。

4.紫綬褒章受章の感想や今後の意気込み
紫綬褒章受章の感想や今後の意気込みについてもお伺いしました。感想としては純粋に嬉しかったということと、今回は企業の研究者としてはお1人だけということで光栄に思うということ、また、事業化は決して1人でできるものではないため、色々な人の顔が浮かんだというお話をいただきました。今後の意気込みとしては、自分自身も頑張るが、若い人たちとぜひ頑張っていきたいとお言葉をいただきました。

東北大生、卓越大学院プログラム生にエールもいただきました。今やっていることは大きなことではないかもしれないが、若い頃に取り組んだことは残るので、色々取り組むうちの一つを深い課題に落とし込んで頑張ってください、と激励いただきました。

5.インタビューの感想
今回のインタビューでは記事に書ききれない内容を含めて今岡先生からたくさんのお話をいただきました。世界で使われている顔認証技術を開発するための試行錯誤や研究チームのマネジメントのお話、今後の医療分野への活用のお話、研究者としての研究への向き合い方など今後の大学院生活にも活きてくるお言葉をいただけたと感じております。特に、「深く考える」ということを残り2年を切った大学院生活で向き合っていきたいと思いました。


未来型医療創造卓越大学院プログラム生
医学系研究科 医科学専攻(博士4年)
久保田 雄大

この度、紫綬褒章を受章した今岡仁先生に、受章後のインタビューをさせていただく機会をいただきました。今岡先生は、自身が手掛ける顔認証技術で、何度も世界一の座を獲得していらっしゃる方で、研究・仕事への向き合い方などをお聞きしたいと思いインタビュワーに立候補しました。

インタビューする内容の事前準備として、3つの軸についてインタビューできるように議論・推敲を重ねました。3つの軸として具体的には、①顔認証技術の詳細について、②世界一の顔認証技術を通して見る未来について、③社会的に大きなインパクトを出す研究をするために普段から意識していること を意識してインタビューの構成を考えました。

インタビューでは、3つの軸それぞれについて、今岡先生から詳しいお話、先生独自の説得力のある言葉をいただきました。それぞれ一番印象に残った言葉をご紹介します。

1.顔認証技術の詳細について
「私たちの研究する顔認証技術は、精度・検索速度・経年変化において他社・他研究所とは一線を画していて、あらゆる場面で使用できる技術を目指して開発を行っています。データのとり方として、ただの平面の画像だけでなく、360°様々な方向から撮影した写真・動画などを教師データとして使ったりといった工夫をしています。」

2.世界一の顔認証技術を通して見る未来について
「今後の展望としては、ヘルスケア・医療の領域で、患者の姿を画像として捉え、病気を推測することができるようなサービスを目指しています。顔認証を含めたあらゆるデジタル技術を社会に実装していく中で、DX前例のないグレーな部分を避けずに議論をし、日本を前へ進めていきたい。」

3.社会に大きなインパクトを出す研究をするために普段から意識していることについて
「プロジェクトを始める際に、社会に広く使われるであろう課題を選択して始めるということを意識している。チームでプロジェクトを行う上では、真に役立つ良い技術は何かを議論し、正しく検証する。客観的に良いものを立場関係なくフラットに取り入れていくことを徹底している。」

また、東北大学の学生・卓越大学院プログラムの学生へのメッセージとして、「わくわくする大きな挑戦をしたほうがいい。人生はあっという間なんだから」という言葉がとても心に残りました。目先のことにとらわれず、大きな挑戦をするために視線を上げて行きたいと強く思いました。

今回、とても貴重な機会をいただき、大変光栄に思います。インタビューに答えてくださった今岡先生をはじめ、中山先生、卓越大学院プログラムを運営してくださっている多くの方々に感謝申し上げます。

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